共有名義の不動産売却に必要な委任状とは?共有者が認知症の場合も解説

共有名義の不動産売却に必要な委任状とは?共有者が認知症の場合も解説

親から不動産を相続する場合など、不動産を共有名義にしておくことがあります。
こうした共有名義の不動産は、売却において委任状が必要になるケースがあることが注意点です。
そこで今回は、委任状とはどのようなものなのか、委任状の記載内容と共有者が認知症の場合の不動産売却方法について解説します。

共有名義の不動産売却に必要な委任状とは

共有名義の不動産売却に必要な委任状とは

誰か1人が所有者である不動産ではなく、共有者が複数存在する共有名義の不動産を売却する場合、委任状が必要になるかもしれません。
まずは、委任状とはどのようなものなのかを知るとともに、共有名義の不動産売却で委任状が必要になるケースをチェックしましょう。

委任状とは

不動産売却など重大な手続きは、原則として売主本人がおこなう必要があります。
しかし、やむを得ない事情により本人が手続きできない場合、代理人に手続きを依頼するのが一般的です。
代理人が不動産売却の手続きをおこなうにあたり、申請や手続きが本人の意思によるものであるのを証明するのが、委任状です。
委任状にもとづいて代理人が不動産売却を進める場合、手続きによって発生する効果は代理人ではなく売主本人に帰属します。

共有名義の不動産売却で委任状が必要になるケース

共有名義の不動産は、共有者全員の同意がなければ不動産全体を売却できません。
不動産の売買契約時には共有者全員の立ち会いが必要ですが、契約時に立ち会えない場合には委任状が必要になります。
具体的には、共有者のなかに遠方に住んでいる方がいると、その方の立ち会いは困難です。
また、共有者全員が近くに住んでいるとしても、そのなかに入院中の方がいる場合は、不動産売買契約の場に出向くことが難しくなります。
さらに、共有者全員がスケジュールを合わせて立ち会う手間を省くために、あらかじめ代表者を決めてほかの方は委任状を提出することも考えられます。
このように、代表者がほかの共有者の委任を受けて代理人として売却手続きをおこなう場合も、委任状が必要です。

委任状によって代理人に指名されるのは?

不動産売却の手続きをおこなう代理人に指名されることが多いのは、家族や法律の専門家です。
とくに、家族や親戚などが共有者である不動産の売却については、共有者のなかの1人を代理人にすることがほとんどです。
信頼できる代理人が見つからない場合には、弁護士・司法書士といった法律の専門家に代理人を依頼することがあります。

共有名義の不動産売却に必要な委任状の記載内容

共有名義の不動産売却に必要な委任状の記載内容

委任状とはどのようなものかにくわえ、共有名義の不動産売却で委任状が必要になるケースを把握したら、実際に委任状にどのようなことを記載するかを見てみましょう。

委任状の記載内容①委任する方とされる方の名前・住所

委任状に記載する必要があるのは、委任する方と委任される方である委任者と受任者の名前・住所です。
一般的な委任状であれば、代理人となる受任者の名前・住所を最初に記載します。
売主である委任者の名前・住所は、最後に記載しましょう。
委任者と受任者の名前・住所については、それぞれの方が自筆で記入する必要があります。

委任状の記載内容②委任内容

委任状には、何を代理人に委任するかを記載しなくてはなりません。
具体的な文章に法的なルールはありませんが、不動産売買契約の締結の権限を代理人に委任する旨を記載しましょう。
受任者の氏名・住所の下に、上記の者を代理人と定めて権限を委任すると記載したうえで、委任する具体的な権限を列記します。
不動産売却における委任状では、売買契約に関する権限・所有権移転登記に関する権限・売却代金受領に関する権限などを委任するのが一般的です。

委任状の記載内容③不動産の情報

不動産売却の委任状には、売却する不動産の情報を記載する必要があります。
不動産は土地と建物とでわけて記載し、それぞれ所在地を記載します。
また、所在地だけでなく、土地については地番・地目・地積も記載しましょう。
さらに、建物については、家屋番号と住宅の種類のほか、建物構造・各階の面積も記載します。
こうした不動産の情報は、登記事項証明書を見ながら正しい内容を記載することが大切です。
登記事項証明書とは、法務局に保管されている登記データであり、法務局のほか登記所やオンラインで取得できます。

委任状の記載内容④不動産の売却条件

売主の意思に沿った売却手続きを代理人におこなってもらうには、不動産の売却条件を委任状に盛り込むことが大切です。
具体的には、売却価格・引き渡し予定日・違約金などについて、記載するのがおすすめです。

しかし、委任状を自作・記入するだけでは、不動産取引において不十分です。

その委任状が「間違いなく本人の意思で作成されたもの」であることを証明するために、以下の準備がセットで必要になります。


・実印の押印: 委任状の署名横には、市区町村に登録している「実印」を押印します。

・印鑑証明書の添付: 発行から3か月以内の印鑑証明書を添付するのが一般的です。

・本人確認書類の写し: 運転免許証やマイナンバーカードのコピーを求められることもあります。


これらがないと、買主側や仲介会社、登記を担当する司法書士から受理されないケースがほとんどなので注意しましょう。


委任状の記載内容⑤有効期限

委任状を作成する場合、委任状に記載された権限がいつまで有効かを記載する必要があります。
委任状の作成日を記載したうえで、数か月先まで有効と記載するか、有効とする期限の年月日を記載しましょう。

共有名義の共有者が認知症になった場合の売却で活用したい成年後見人制度

共有名義の共有者が認知症になった場合の売却で活用したい成年後見人制度

共有名義の不動産を売却する場合、委任状があれば共有者全員が売買契約に立ち会う必要はありません。
しかし、共有者が認知症の場合については、委任状が使えないことは注意点です。

認知症の共有者が作成した委任状の扱い

民法では、契約などの法律行為において、意思表示をおこなうタイミングで意思能力がなかった場合、その法律行為は無効になると定められています。
意思能力がない具体的なケースとしてよくあるのが認知症で、認知症が進んでいる場合には判断能力なしとみなされ、委任状が無効になります。
本人による売買契約が無効になるだけでなく、認知症の方が作成した委任状についても、その委任契約は無効です。
認知症の方が作成した委任状で不動産売却が成立したとしても、あとから意思能力がなかったことが判明した場合、取引をさかのぼり無効とされます。

共有者が認知症になった場合の不動産売却方法

共有名義の不動産の共有者に認知症の方がいる場合、通常の流れでは不動産売却が難しくなります。
このようなケースでは、成年後見人を立てて不動産売却を進めるのが一般的な解決策です。
成年後見人とは、認知症など意思能力がない方の法的な代理人であり、その方に代わって財産を管理する役割を担います。
共有名義の不動産売却が認知症の方の保護につながると判断されれば、成年後見人による不動産売却が認められる場合があります。
ただし、認知症の方の保護につながらないと判断された場合には、不動産売却も家庭裁判所から許可がおりない可能性があることは注意点です。

成年後見制度の種類

成年後見制度には、家庭裁判所が選任する法定後見と、本人が選任する任意後見の2種類があります。
法定後見とは、認知症が進み判断能力が十分にないとされた場合に利用するものです。
一方で任意後見とは、将来的に認知症が進み判断能力が失われた場合に備えて、判断能力があるうちに利用するものです。
法定後見と任意後見を比較してみると、任意後見のほうが本人の自由度が高くなります。
任意後見は、自分で成年後見人を決められるだけでなく、後見人の職務・報酬についても自分で決定する権利があります。

共有名義の売却で委任状を悪用されないための対策

代理人に権限を預ける以上、「勝手に安い価格で売られないか」「代金を持ち逃げされないか」という不安が生じるのは当然です。

トラブルを防ぐために、以下の対策を講じましょう。


・「白紙委任」は絶対に避ける: 委任事項や売却価格が空欄のまま印鑑を押してはいけません。必ずすべての項目を埋めた状態で交付してください。

・振込先を「各共有者の口座」に指定する: 売却代金を受任者(代表者)がまとめて受け取るのではなく、売買契約書において「持分に応じて各共有者の口座に直接振り込む」よう指定することで、金銭トラブルを回避できます。

・司法書士による本人確認: 最終的な登記申請時には、司法書士が委任者本人に電話や面談で「本当に売却の意思があるか」を確認するのが通例です。このプロセスを省略しないよう依頼しましょう。


まとめ

委任状とは、遠方に住んでいる・入院しているなど本人が契約に立ち会えない場合に作成する書類です。
共有名義の不動産売却に使用する委任状には、委任者と受任者の名前・住所のほか、代理人に委任する権限の内容や不動産の情報を記載します。
共有者が認知症になった場合には委任状が無効になりますが、成年後見人を立てて不動産売却を進めましょう。